「地方に住んだまま、デザイナーとして働き続けられるのか」。
そう感じている人は少なくありません。地方は求人が少なく、未経験なら尚更厳しいと思われがちです。
Uターンや家族の事情で地元に戻ることを考えている人にとっては、なおさら切実な悩みだと思います。しかし実際には、地元就職・フルリモート正社員・フリーランス独立という3つの道があり、スキルの組み合わせ次第で年収を伸ばすことも可能です。
本記事では、地方デザイン会社から独学でWebデザイナーへ転向し、地方在住のままフルリモートで東京の企業に転職した実例と統計データをもとに、具体的な進め方をまとめました。
この記事のポイント
- 地方在住でも働き方は3つの道がある
- 地方の雇用型テレワーク比率は16.8%と都市部の半分以下
- 地方デザイン会社出身でも年収が倍以上になった実例がある
- 未経験でも探し方の工夫で十分カバーできる
地方在住のままデザイナーとして働く3つの選択肢

地方に住んだままデザイナーとして働く方法は、地元企業への就職、都市部企業へのフルリモート就職、フリーランス独立の3つに整理できます。
それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。
- 地元企業への就職: 地方の印刷会社やデザイン会社に勤務する。雇用は安定しやすく生活コストも抑えやすいが、求人数も年収水準も限られやすい。
- フルリモート正社員: 都市部の企業に籍を置きながら地方で働く。案件の幅と年収を両立しやすいが、求人数はコロナ禍後に絞られている。
- フリーランス独立: 企業に属さず案件を受注する。首都圏外在住フリーランスは全体の約39%を占め、完全リモート実施率は42.2%に達する(フリーランス協会「フリーランス白書2023」、調査は2022年9〜11月のためやや古いデータである点に留意が必要)。
3つのうちどれを選ぶべきかは、収入をどこまで重視するか、そして自由度と安定性のどちらを優先するかによって変わります。地元での人間関係や生活コストの低さを重視するなら地元就職が向き、収入や経験の幅を広げたいならフルリモートや独立が候補になります。子育てや親の介護など地元を離れにくい事情がある人ほど、この3つを併用して考える視点が役立ちます。
筆者の場合は、地方のデザイン会社に7年勤務してデザインと印刷実務の基礎を身につけました。そのあと地元のWeb制作会社で3年ほど経験を積み、フルリモートで東京の企業に転職しています。
ただしコロナ禍後はフルリモート可の求人が減り、週1〜2出社などの条件付きに置き換わるケースが増えています。地方在住者が応募できる求人自体が狭まっている実感があります。
地方在住者にとって、これは逆風でしかないのでしょうか。実際には、1つの働き方に絞らず複数の道を組み合わせる発想があれば、十分に対応できます。
地方在住のままキャリアを伸ばすには、1つの働き方に固執せず、地元就職・フルリモート正社員・フリーランス独立の3つを状況に応じて選べる柔軟さが欠かせません。収入と自由度のバランスは人によって違うからです。
とはいえ、どの道を選ぶにしても、まずは地方の求人事情と年収の実態を正しく知っておく必要があります。未経験から始めるWebデザイナー転職ロードマップも、選択肢を具体化する参考になります。
地方デザイナーの求人事情と年収のリアル

地方のデザイナー求人は都市部に比べて大幅に少なく、年収も低くなりがちですが、フルリモート案件を組み合わせることで年収を維持・向上させることは可能です。
では、地方の求人は実際にどれくらい少ないのでしょうか。個人による調査では、東京のデザイナー求人が12,096件であるのに対し、大阪・京都・神戸を合計しても約1,000件にとどまります。県庁所在地クラスでは10件未満の地域も多いと報告されています。ただし2023年4月時点の非公式集計のため、参考値として捉える必要があります。
一方で、地方企業が副業・フリーランス人材を活用する動きは前年比234.5%増と急拡大しています。なかでもIT・クリエイティブ職への活用は543.5%増に達しています(パーソルキャリア「HiPro Direct」調査、2025年12月発表)。
雇用形態別のテレワーク実施率は、首都圏37.5%に対し地方都市圏16.8%にとどまります(国交省調査、2024年10月時点)。地方在住のままオフィス勤務前提の仕事だけを続けていると、働き方の選択肢が狭まりやすい構造がうかがえます。
つまり、地方に住んだまま地元の求人だけを探していると選択肢は非常に限られますが、探すエリアを全国区に広げれば状況は大きく変わるということです。求人サイトの検索条件を地元だけに絞らず、フルリモート可の条件で全国を対象に検索し直すだけでも、見えてくる求人数は違ってきます。とくにIT・クリエイティブ職での伸び率の高さは、地方在住のままでも都市部企業と仕事ができる土壌が急速に広がっていることを示しています。
筆者自身、地方のデザイン会社に勤めていた頃と比べて、フルリモートで東京の企業に転職した現在は年収が倍以上になりました。ナショナルクライアントの案件や上流工程から関われる機会も増え、収入以外の経験値も大きく変わったと感じています。
一方で、コロナ禍後はフルリモート可の求人自体が減り、週1〜2出社を条件とする求人に置き換わる動きも進んでいます。地方在住者が応募できる求人の絶対数は、追い風があるとはいえ楽観できる状況ではありません。
地方と都市部の求人格差は数字で見ると大きいですが、副業・フリーランス活用の拡大というもう一つの流れも同時に起きており、リモート案件を組み合わせれば年収は十分に伸ばせます。
求人の絶対数が少ない以上、未経験や地方在住というハンデをどう乗り越えて案件を獲得するかが、次に押さえるべきポイントです。経験年数と目的で選ぶ転職エージェントの選び方も、都市部企業のフルリモート求人を探すうえで参考になります。
未経験やブランクを克服して転職・案件獲得する方法

未経験や地方在住というハンデは、独学によるスキルの掛け合わせと、探し方の使い分けによってカバーできます。
筆者はWebデザイナーとしては独学からのスタートでした。デザイン会社時代の副業でサイト構築やアプリ開発ができる程度のプログラミング知識と、SEO集客の実績を身につけていました。この掛け合わせがあったことで、通常の未経験転職より有利に進められたという特殊な事情はあります。裏を返せば、デザイン以外のスキルを一つ持っておくことが強力な武器になるといえます。スキルを掛け合わせる際は、必ずしもプログラミングである必要はありません。ライティングや写真撮影、SNS運用代行など、地方の中小企業が個別に外注しづらい業務を一つ担えるだけでも、案件獲得の際の差別化材料になります。
未経験期間を乗り切るための実践ステップ
未経験期間を短くするには、次の4つを順番に進めるのが現実的です。
- 模写やトレース制作でデザインツールの操作に慣れ、基礎を固める
- クラウドソーシングで実績を3〜5件作り、公開できるポートフォリオに仕上げる
- プログラミングやSEO、ライティングなど、デザイン以外のスキルを一つ習得する
- 地方在住であることを逆手にとった提案文を用意し、エージェントやマッチングサービスに登録する
この結果が示すのは、未経験からの転職は一足飛びではなく、実績とスキルを段階的に積み上げる期間が必要だということです。
筆者自身も、デザイン会社からWebデザイナーへの転向、そしてフルリモートへの転職までにはそれぞれ数年単位の期間がかかっています。焦って結果を急ぐより、今の環境でできる準備を一つずつ進めるほうが、結果的に近道になります。
では、実際にどこで案件や求人を探せばよいのでしょうか。地方在住デザイナーが使う主な探し方には、それぞれ異なる特徴があります。
| 探し方 | 地方在住者との相性 | 特徴 |
|---|---|---|
| 転職エージェント | フルリモート正社員狙いに向く | 非公開求人を含めて紹介してもらえるが、地方拠点の求人自体が少なく、都市部案件の紹介力に差が出やすい |
| クラウドソーシング | 実績作りの初期段階に向く | 未経験でも案件は取りやすいが単価が低くなりやすく、実績作りの位置づけで使うのが現実的 |
| 地元の商工会や自治体 | 地元就職や地域案件に向く | 地域企業のデザイン案件や地域おこし協力隊枠など、他では出会いにくい案件があるが案件数自体は少ない |
| フリーランスマッチングサービス | 独立や副業からの移行に向く | 都市部企業の案件を地方から受注しやすいが、実績とポートフォリオが前提になり登録直後は案件が来にくい |
未経験のうちはクラウドソーシングや地元案件で実績を積みましょう。ポートフォリオができた段階でエージェントやマッチングサービスに軸足を移す、という段階的な使い分けが現実的です。地方企業への転職で評価される自己PRの書き方も、案件獲得の場面で役立ちます。
探し方は一つに絞らず、クラウドソーシングから商工会、エージェントまで経験値に応じて使い分けることが、地方在住というハンデを埋める最短ルートになります。焦らず段階を踏むことが結果的な近道です。
ここまでの内容を踏まえて、地方でデザイナーを目指す人からよく寄せられる疑問にまとめて答えます。
よくある質問
地方在住のままWebデザイナーに転職するのは可能ですか?
可能です。地元企業への就職に加えて、都市部企業のフルリモート求人やフリーランス案件を組み合わせれば、地方に住んだまま働き続けられます。実際に地方在住のままフルリモートで働く人は年々増えています。
未経験からでもデザイナーとして転職できますか?
独学であっても、プログラミングやSEO、ライティングなど関連スキルを一つ掛け合わせておくと、未経験からの転職は有利に進みやすくなります。デザインスキルだけで勝負しない発想が重要です。
地方在住だとフルリモートの求人は見つけにくいですか?
コロナ禍後はフルリモート求人が減り、週1〜2出社の条件付き求人に置き換わる傾向があるため、以前より探しにくくなっているのが実情です。検索条件をこまめに見直す必要があります。
収入は地方在住のままでも上げられますか?
フルリモートで都市部企業の案件に関われるようになれば、地方在住のままでも年収を大きく伸ばせる可能性があります。実際に年収が倍以上になった例もあります。
地域おこし協力隊のようなデザイン関連の枠も対象になりますか?
なります。地元の商工会や自治体が募集する地域おこし協力隊のデザイン枠は、民間求人には出てこない案件に出会える経路の一つです。
まとめ
地方に住んだまま働くデザイナーの選択肢は、地元就職・フルリモート正社員・フリーランス独立の3つです。求人数の格差は数字上も明らかですが、副業・フリーランス活用の拡大という追い風もあります。
未経験であっても、デザイン以外のスキルを一つ掛け合わせ、探し方を段階的に使い分ければ、地方に住んだままキャリアを広げることは十分に可能です。
情報収集だけで足踏みするより、模写でのツール練習やクラウドソーシングへの登録など、今日から始められることに着手するほうが近道です。年齢を理由に地方転職を諦めなくていい理由も参考にしながら、まずは自分の現在地に合った探し方から、小さく一歩を踏み出してみましょう。